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ご長寿少女漫画『王家の紋章』ファンの管理人が 妄想から書き出した二次創作小説です♪^^ 


by asuku9002
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ライアン(後篇) ⑥

●ライアン(後篇) ⑥ 追跡



『王!メンフィス王!大変でございます!!』

『キャロル様が・・・!!』

『なにっ?!』

慌しい兵の様子に敏く目覚め 何事かとバルコニーへ出ていた王は 兵の報告に カッと眦を吊り上げた

『キャロルが連れ去られただとっ?! おのれ 何奴!!衛兵!見張りは何をしていたか――――っ!!』 

ギリと唇を噛み締め 兵が指し示す方向を見遣った王の瞳に 城壁に佇む一頭の騎馬が飛び込んできた

一人のエジプト兵と その腕から流れ落ちる黄金の髪とを目にした瞬間 大きく跳ねた心臓に 王の世界は一瞬 色を失った

・・キャロルっ!!

見開いた闇色の瞳に 次の瞬間 激しい怒りが爆発する

『馬引け―――っ!!あ奴を決して逃してはならぬ!!』

『キャロル―――っ!!』

蒼白な顔で怒鳴るようにそう命じた王は 夜着のまま剣を手に 弾かれたように庭へ飛び降りた

王の瞳は 烈火の如く激しく燃え上がり 艶めく黒髪は 駆けるがままに宙を舞う

多くの兵が城壁に集う中 騎馬の兵は 篝火の中に王が向かい来るのを認めた瞬間 馬の腹を蹴り 嘶く馬ごとその身をナイルへ躍らせた 

『な・・っ!!キャロル―――っ!!』

王の心臓が ドクン!と跳ねた
冷たい汗が噴き出し 恐怖が 氷の刃のように王の胸を貫く

城壁へ駆け上った徒歩の兵が ナイルを覗き込むと 王へ叫んだ

『王!王妃様はご無事です!賊は馬のまま浅瀬を渡り 砂漠へ向かっている模様!』

『門を開けよ!船を出せ!ミヌーエ!ウナス!ルカは何をしているっ!!』

兵の声を耳にした瞬間 王は眦を切れんばかりに吊り上げて そう叫んだ

素早く集った部下達へ 駆ける馬上から 己への追従と周囲の警護 他の賊の捜索とを厳しく命じた王は 

『メンフィス王!!』

背後からかけられた声にハッと振り返ると きつく眉を寄せた

『王!僕も行くぞ!』

いつの間にか事態に気づいたライアンが 騎馬で王に続いて来ていた
蒼白な顔に 厳しい怒りを燃え立たせている

『キャロルが浚われるなんて・・・!ここは一体どんな警備をしているんだ!!』

ライアンの 思わず口を付いて出た言葉に 王は返す言葉もない
怒りと悔しさにギリと唇を噛み締めて ひたすらに馬を駆ける

『ライアン殿 キャロルは我が妃・・・むざと浚わせはせぬ!!必ず連れ戻す!!』

そう叫ぶように言い置くと 王は更に速く馬を駆けさせ ライアンから離れて行った

『く・・・っ!!』

馬の違いか 腕の違いか・・・
ライアンも乗馬は得意だったが 王の馬の足には及ばない

追いつく為に 必死で馬の腹を蹴るが その距離は離れていく一方だった

『王!待たれよ!先行され過ぎては危険です!!』

王に僅かに遅れて ミヌーエ将軍がそう叫んでいるが 王の耳に届いている様子はない

王の瞳は ただひたすらに 前方を駆ける騎馬のみを追っていた

おのれ・・・我が懐から キャロルを奪うなど・・・決して許せぬ!!
何の企みか!必ずや正体を暴き出し その身を八つ裂きにしてくれる!!

まだ闇深いナイルの辺を 数頭の馬が 破竹の勢いで駆け抜けて行った・・・







王宮では 女官長ナフテラが 驚愕の表情で王妃の褥を凝視していた

『キャロル様・・・!!』

王妃誘拐に エジプト王宮が蜂の巣を突いたように騒然としている中 当の王妃は 己が居室で安らかに眠っている 

常に傍に仕えているルカも 王妃が休んでから 居室周辺に変わった様子はなかったと ナフテラへ報告した

ルカの顔にも 困惑の色が浮かんでいる

『これは・・・王を誘き出すための 何者かの陰謀では・・・!!』

ナフテラの顔が 途端に蒼白になる

『メンフィス様に 早くご連絡致さねば!!』

ナフテラの命により ルカは急ぎ 王を追って王宮を出た

『ウナス隊長!キャロル様はご健在です!誘拐などされてはおりませぬ!これは 何者かが企んだ 王を誘き出すための 卑怯なる陰謀にございます!!』

ナフテラは侍女たちに 王妃健在の様子を浮き足立った兵達へ連絡させると 己は警備隊長のウナスへ 急ぎそう報告した

イムホテップと共にその報せを聞いたウナスは 王妃の居室へ駆け込むと 安らかな寝息を立てて眠る王妃を見て愕然とする

『キャロル様!! おお まこと ご無事で・・・しまった!ファラオっ!!』

王妃の無事を確認したウナスは 脱兎の如く王妃の居室を飛び出し兵を召集すると 王の後を追った

『しまった―――っ!! 何故はじめに確認を怠ったのか!!』

『あの黄金の髪に 皆が騙された・・・!!』

ウナスは悔しさに歯軋りし 掴んだ手綱を強く握りしめる

『これは王を誘き出す企み!王よ どうかご無事で・・・!!』

蒼白な顔に冷や汗を伝わせながら 騎馬隊を率いるウナスは 必死に砂漠を駆ける

『ルカ 間に合ってくれ!王よ どうか・・・どうか ご無事で・・・!!』

祈るように呟くウナスは 己の失態に きつく唇を噛み締めた

ウナスの一団は砂塵を巻き上げ 怒涛の勢いで砂漠を駆け抜けて行く・・・
by asuku9002 | 2005-10-05 14:34 | ライアン(後編)①~⑯